筒井ともみ著『舌の記憶』を読んでいる。
祖母のジャムサンドビスケット、 くすぐったい白玉、 嵐の後のおじや、伯父とスープ…。 春夏秋冬。食べものにまつわるエッセイ。 先日、シンヤが「眠れない…」 という夜に「シンヤの舌の記憶は?」 と聞いてみたら、 ラジオ体操と鯉とミルクセーキの話や、 音楽会と家族の外食と鱧寿司の話をしてくれて… 案の定、眠れないはずのシンヤは すやすやと寝息をたてはじめた。 この本を貸してくれたのが、 器作家のHanaさん(写真の器はHanaさん作)だったので、 陶芸をしている人っていうのは、舌の記憶がより鮮明なのかなぁと 思ったりした。さらには、器の記憶っていうのもあるのかな、と。 わが実家を思い出すと、すてきな器などというものは記憶にないが、 憶えているひとつは、サトウハチローさんの詩が刻まれた白い小皿。 もやしの味は 母の味 味のないところに 味がある サトウハチロー わたしの記憶の中の詩で、ほんものがこれかどうか怪しいが、 どうやら子どもながらにこの詩をいい詩だと思っていたよう。 サトウハチローという人をはやくから認識し、 子どもには退屈と思われがちなもやしも 「味のないところに味がある」からと好きだった。 今でももやしを見ると、 母がつくってくれたもやしの玉子とじ(味つけてるっ)の味と サトウハチローの詩の白いお皿がくっきりと結びついて意識の表に現れる。 #
by u-wakaroku
| 2005-12-21 09:01
| 年中読書
TVドラマ・「クライマーズ・ハイ」。
前編を見逃していたけれど、先日、後編を観た。 舞台は新聞社。主人公は記者。 これはストーリーの主題とはちがうのだが…。 大切な人を交通事故(主人公の責任もある)で亡くした若い女性が 大きな事件(ジャンボ機墜落)だけを扱う新聞社に対し、命の重さは違うのか?! と問いつめ、そのことを書きつづった投書を掲載してほしいと頼みにきた。 掲載したことで、ジャンボ機墜落事故の遺族から反感を買い、 主人公は職場を追われることになる。 女性は掲載された自分の投書と、ジャンボ機事故の遺族の哀しみを知り、 たいへんな過ちを犯してしまったと主人公に涙の電話をかける。 その時返されたセリフのひとつが印象に残った。 「言葉はそこにいつづける」 この一言はよく憶えているけれど、あとはうろ憶え。 「誰だって恐い。でもそこから目をそらすな。 言葉にそっていくしかない。だから書きつづける」 大学でジャーナリズムを勉強していた女性は、新聞記者になることを決意する。 わたしの父は新聞記者だった。 奈良版の地方記者で、一昔前、わたしの記憶するところ 新聞のトップ面をゆるがすような悲惨な事件は起こっていない。 代わりに毎日どこかで遺跡やなんかが発掘された。 歴史の記録を塗り替えるようなものもあった。 父はポケットベルが鳴るたびに、カメラをもって飛んでいった。 そんなふうにして毎日何かを書いていた。 原稿用紙。特徴のある筆跡。 送信する機械(パソコンの時代ではなかった)。写真を現像する暗室…。 それらをまだはっきりと憶えている。 病弱だった祖父。3人の妹。新聞配達をはじめた少年時代から 父は新聞と関わりつづけてきた。 かなわないことを言っても仕方のないことはわかってはいるけれど、 わたしが今いちばんインタビューをしてみたいのは父だ。 生涯をかけて父が伝えたかったものは何だったんだろう。 #
by u-wakaroku
| 2005-12-20 08:51
前々から行こう行こうと思っていた
名護シアターについに足を運んだ。 名護シアターは本島北部に唯一残る 小さな小さな映画館で、 国内外から優れた名作を選び、 発信しつづけてきたことで知られている。 経営難と館長の引退でこの年末、 いったん映画館は閉鎖される。 「やんばる名画同好会」のメンバーなどが 存続の術を模索中とのこと。 それにしても古い映画館だった。 階段をのぼっていくにつれて、時代を遡る。 はじめて会う人がほとんどなのに、 さまざまなな人々とゆるゆると会話がはじまる。 映画館の方から手渡されたのは、 洗剤の空きボトルに入れられたお湯。 暖房設備がないので、これを湯たんぽ代わりにと。 関西にも小さな映画館はたくさんあったが、 湯たんぽはもちろんはじめての体験だった。 見渡せば、慣れているお客さんは 毛布などを持参している。 この昔の喫茶店のようなロビーでカメラをまわしても じゅうぶんおもしろいはずだ。 閉館まで上映されているのは「亀も空を飛ぶ」。 今までに目に耳にしたどんな報道よりも リアルにイラク戦争を感じた。 スクリーンの向こうの恐怖に心臓がびくびくした。 これ以上感想は書かないけれど、 観てよかったことは確か。 沖縄本島在住の方は年末30日までにぜひ。 全国でも上映中、 上映予定のところが多々あるようです。 #
by u-wakaroku
| 2005-12-19 09:17
| 沖縄小箱
きのうから読谷村・やちむんの里で開催されている陶器市。
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by u-wakaroku
| 2005-12-17 16:48
| 読谷村らいふ
読谷村のマックスバリューのレジには、とてもすてきな笑顔の女性が一人いて、
先日、なっちゃん夫婦と話している時、その話が出た。 どうやらこれは村内の多くの人が感じていることらしく、 お店への要望カードが貼られた掲示板にも、彼女を称讃する声が書かれてある。 「あの人にはどんな家族がいて、どんなものを食べて、 どんなことを見聞きしながら暮らしているんだろう?」 と言ったら、なっちゃんに 「ゆうちゃん、変わってるね」と言われた。 変わっていると言われたことがわたしには意外だった。 みんなはそんなこと思わないのか…。 笑顔といえば、土曜日、「サバニカフェ」で開催されていた 陶と食のコラボ展(正式なタイトルをそういえば知らない)に行った。 サバニカフェに足を運ぶのはこれで2度目。 こちらのシェフも笑顔の人だ。 あんまりずっとにこにこされているので、 はじめ、わたしの顔に何かついているのかと思ったくらい。 どうやらちがうようで、テーブルからはキッチンも見えるのだが、 料理をしている最中も楽しげである。 ときどき自ら料理を運んできてくださるときなど、 夏休み中の子どもがとびっきり楽しい体験をした後みたいな表情である。 当然、お皿の上にも楽しさが盛られている。料理が笑っている。 幸せな食卓だった。 使われた食材は 今帰仁村で有機農業をされている片岡さん(これまたユニーク!な京都人)が 育てられた野菜と、 大宜味村で青空放牧養豚されている山本さんのもとで育った豚の肉。 3人の男たちのコラボレーションが、さらに宜味村の陶芸家・山上さんの器に盛られる。 前に大宜味村で催されていた展示会でたまたま目にし、ぐぐぐと惹かれた。 今回のコラボ展に行ったのも山上さんの器に興味をもってというのがいちばんの動機。 山上さんに会場でお目にかかることができた。 落花生サンタ(↓)もびっくりの真っ赤なシャツとこれまたとびっきりの笑顔! 大阪生まれということで(わたしは奈良、シンヤは京都)関西のお話はしたけれど、 そういえばわたしは山上さんに聞きたいことがいっぱいあったのだ。 なにをきっかけに土鍋を多くつくるようになったのか、なぜ大宜味なのか、 なぜへびなのか、ドーナツ型の酒器はどんなときに出たアイデアか それからやっぱり、ふだんどんなものを食べているのか…などなど。 今度会ったらお話をうかがおう。 そしてお金を貯めて、土鍋を買っておいしいごはんを炊こう。 カメラをもっていくのをすっかり忘れていたので、山上さんの器と当日の料理は 山上さんのパートナー(きれいで魅力的な女性です)・jinjinさんのブログをどうぞ。 #
by u-wakaroku
| 2005-12-16 17:42
| 沖縄小箱
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