世界がこんなに騒がしい日には

c0060254_12542047.jpgその日、とある図書館で、なぜかわたしは
ヤングアダルトコーナーに足が向いた。
ヤングアダルトコーナーってネーミングはどうかといつも思うけど、
その図書館が、中高生くらいの人を対象に
「この本は君たちが今読むといいよぉ」というものを集めて置いてあるところだ。

そして、わたしは1冊の本に手がのびた。
門秀彦著『世界がこんなに騒がしい日には』。
タイトルに、惹かれた。

耳の聞こえない両親のもとに生まれた、
アーティスト・門秀彦さん。
音は聞こえるのに、声が聞こえない世界からはじまった
生き方が、本人の手によって書かれてあった。

そういえば、子どもの頃は、わたしも、きっと誰しも、絵を描いた。
画用紙に。
ノートに。
教科書のすみに。
壁に。
道路に。
いつから、絵を描かなくなったのだろう。

大人になっても絵を描きつづけるのは、ほんの一握りの人。
好きなことをつづけるのは、誰もが知っているように
とても難しい。
でも門さんは続けた。
「人はそれぞれに必要な課題を背負って生まれ、
その課題を乗り越える事で経験を積み、
すべての経験が感動を育て、
その感動が幸せのありかを教えてくれる」
ほんとうに乗り越えてきた門さんの言葉は、
強く響いた。

門さんが描く絵は、風景画ではない。

 僕は「美」や「真」を描きたいとは思いません
 僕は「自」や「神」を描きたいとは思いません
 僕は「牛の骨」や「りんご」を描きたいとは思いません

 僕が描きたいのは「こんにちは」や「さようなら」
 僕が描きたいのは「ありがとう」や「元気でね」
 僕が描きたいのは「愛してる」や「おやすみ」

そして、こんなことも。

 僕の絵の中で
 君が笑ってるといい

 僕の絵の中で
 君がうたた寝をしてるといい

 僕の絵の中で
 君が誰かに包まれてるといい

 僕の絵の中で
 君が誰かを包んでるといいね

 もし君が

 悲しい愛に埋もれそうになっても
 どうか元気を出して

 大切な人に囲まれて
 無関心な人に囲まれて
 裏切る人に囲まれて
 思い出に囲まれて
 木々に囲まれて

 いつかこの絵が
 君に届くといい

わたしは「書く」仕事をしてきたが
わたしが書きたいのはどんなものなのか…。
すこし考えてみよう。
そして、たくさんの人に向ける言葉を考える前に、
いちばん大切な人に届くものを
書きたいと思った。

世界がこんなに騒がしい日には
わたしは何を書こう。
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by u-wakaroku | 2005-03-07 21:06 | 年中読書


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