人気ブログランキング | 話題のタグを見る

記事掲載報告。

 山口未可さんが「わたしはすごく不器用だから」と口にするたびに、ある少年のことが頭に浮かんだ。
 にぎやかなお祭りの日、とある村の小さな公園。子どもがおおぜいいて、気弱な少年はめあてのブランコに近づくことすらできないでいた。他の子どもたちがさんざん遊んで、飽きて、ようやく空いたブランコ。臆病にゆらしながら、幼い顔いっぱいに浮かべた笑み。
 不器用だが彼は知っていた。待つこと。辛抱強く待つこと。ゆっくり近づくこと。体じゅうでよろこぶこと。何かに感謝すること。楽しさをふりまくこと。
 泣いたり、すねたり、癇癪をおこすよりも、笑っていたほうがいい結果を招くことを、性格ゆえなのか、環境が導いたのか、幼いながら彼は知っていた。

記事掲載報告。_c0060254_19113874.jpg 「わたしの器は、陶芸をしている人、作る側から見れば、ここはもっとこうしたほうがいいと言いたくなるところがたくさんあると思うんです。でも使う人にとっては、それがかえって安心できるよう」
 自分の器が人に受け入れられる理由を、独特の「ゆるさ」だと言う未可さん。
「自分はこうだ!と強烈な個性を主張して器をつくっている人とはちがう。自分を出そうとするとだめ。隠しても、隠しても、それでも結果的に出てくる人間性、隠せない本質。そういうやり方がわたしにはあっているんです」
 言い切れるまでには、長い道程がある。

つづきを読む
by u-wakaroku | 2006-01-23 19:13 | 「IDEAにんべん」のしごと


<< 野口健さんの講演会。 パン屋さんの長い一日。 >>